なんというか、他の国内大手鉄鋼メーカーが軒並合併して、事業を整理している中で。
ここだけ独立独歩でグループ企業を維持し続けるのは、無理があったのではないか。
と、そう思ったりするわけですよ。
かつて事業提携していた、新日本製鐵と住友金属工業は合併して、
新日鐵住金グループとして大規模なリストラを断行しましたし、
そのときに、
神戸製鋼も加わっていたら、ここまで落ちることはなかったのになぁ、
と素人考えでそう思うのですけど。
中途半端に稼げていたから、行く先を見失ってしまったんですねぇ。
私的には、
これに似た事例としてパッと思い浮かぶのが、
『ディーゼル車の排ガス不正問題』です。
あれは、
一社だけの問題ではなくて、
主にディーゼル車を開発しているEUメーカーが、
EUの排ガス規制が甘いのにつけ込んで排ガス成分の規制物質の実測データの中身を改ざん、
燃費についてもごまかしたり、悪い形で利用して、
EU外へ輸出、生産している車種についても、
同様の手口を用いていたため、
EU外のアメリカで露悪した、という。
EU域内メーカー全体の問題でしたけど。
本来なら、EUがこれらの自動車メーカーを厳罰に処すべきですけど、
今のところ、ディーゼル車からEVへの転換を打ち出して、
事件そのものをなかった事にしようと、政府後押しで必死に誤魔化しています。
酷いよね……
まあ、ヨーロッパの理想も一皮剥いたら、そんなもの、って話なんですけど。
さて、
ここで、このEUのディーゼル車排ガス不正事件から
今回の神戸製鋼の不正事件の教訓とすべき事実は、
これが1社の不正なのか、それとも業界全体の不正=慣行なのか、
その見極めが必要だ、ってことです。
今のところ、
神戸製鋼グループの問題とされてますけど、
他の国内大手製鉄グループでも似たような不正を、本当に行っていないのかどうか。
ここは、はっきりさせておかないと、
『メイド・イン・ジャパン』は全部信用できない。ってことになるのではないでしょうか。
事がここまで大掛かりになると、
どれだけ日本国内で穏便に済ませようとしても、
国外が、製品の安全性に疑いを持ち始めて、
片っ端から自主検査を始めて日本にクレームを付けてくる、
ってことにもなりかねません。
信頼できる第三者組織が……この場合、政府になるのでしょうか?
業界にきちんとしたヒアリングを行って、
製品の品質について、
今回の問題について、神戸製鋼と業界を早々に切り分けるべきではないか、と。
場合によっては、
他のメーカーへの飛び火を防ぐために、
神戸製鋼はお取り潰し、ってことも必要になるかもしれません。
衆議院選挙の真っ最中で、
政府がバラバラになってしまっている時期ですけど。
ここで後手に回ると、
後々取り返しの付かない事態になりそうな気がするんですけどね。
あと、
私が見た印象では、
この神戸製鋼の記者会見は失敗だったと思います。
今、この段階で『補償』について、
『腹づもりはある』とか言うべきではなかったですよ。
まず、事態の全容が掴めていない、
どれだけの事が起きているのかまだすべて分かっていないので、
全容の把握に全力を尽くす。
その上で、
補償については、今この場にいる私が口にするのが適切かどうか、
私ではなく、他の人間が考えるべき課題になるかもしれない、
だから私からは具体的に言えない、
けど、どのような場合でも会社として『誠意を持って対応させていただきます』
とか、
こういう場合、上から目線の言葉使いはNGです。
ひたすら平身低頭に徹さないと反感を買い、会見を開いて敵を増やすだけになります。
というか、
もうそうなっちゃったよね。
このまま行くなら、
他のメーカーへの身売り、吸収合併は避けられないんじゃないですかねぇ。
神戸製鋼所は13日、一連の性能データ改竄問題で新たに鋼線や特殊鋼など9製品でも、不適切行為が確認されたと発表した。同社が12日時点で「不正はない」と説明していた鉄鋼製品にも問題が広がった。日本のものづくりに対する信頼を揺るがす重大な不祥事に発展し、午後5時から品川プリンスホテル(東京都港区)で開かれた記者会見には約300人の報道陣がつめかけた。
会見は予定より1分早い4時59分にスタート。同社の用意した説明資料が集まった記者の数より少なく、担当者が急いでコピーに走る混乱ぶりも見せた。
説明に当たったのは、川崎博也会長兼社長と勝川四志彦常務執行役員、内山修造ものづくり推進部長の3人。冒頭で川崎会長が「不適切な行為でユーザー様、消費者の皆様に多大なご迷惑をおかけしており、改めておわび申し上げます」と陳謝し、深々と頭を下げた。
新たに不正が見つかった製品は、中国の2次加工メーカー2社で製造した鋼線約3800トンのほか、特殊鋼約4000トン、ステンレス鋼線約550トンなど。アルミ・銅製品でも新たに5件判明した。
いずれも性能検査の一部を実施していなかったり、検査データを書き換えるといった捏造、改竄を行ったりしていた。もっとも古い例は10年余り前の平成19年4月出荷分までさかのぼり、今回判明した納入先はのべ200社以上に上る。
前日に「不正はない」と説明していた鉄鋼製品でも不正が発覚したことについて、川崎氏は「今回の自主点検の連続性の中で『ない』と申し上げた。しかし徹底的な原因分析、対策を考える上で、過去の事例を踏まえた原因、対策を講じる必要があるため、すでに完了していた鉄鋼グループ各社の4案件についても報告させていただいた」と釈明。一連の不正とは異なる“過去の事例”だとの説明に対し、報道陣から疑問の声も上がった。
新たに判明した不正の説明は17分で終わり、質疑応答に移った。主なやり取りは以下の通り。
◇ ◇ ◇
−−だれが偽装を行ったのか
川崎会長兼社長「現在、関係者のヒアリングをしている。現時点で数十人規模だが、品質保証部に加えて製造部門の者も含まれている」
−−「検査の未実施」とは具体的にどういうことか
勝川常務執行役員「製品の肉厚の検査を2カ所行うべきなのに1カ所だけ行い、もう1カ所は検査せずに数値を記載するといった例があった」
川崎氏「『データの捏造』ということになる」
−−不正はさらに増える見通しか
同「全事業部門で調査を進めており、多くの不正が認められた。アルミ・銅部門は現時点でおおむね調査を終えている。機械事業部門や電力部門などでも実施中だが、調査の進捗はアルミ・銅部門がもっとも先行している。鉄鋼事業部門は製品のサイクルがおおむね3カ月だが、その4倍に当たる1年にわたって調べている。経産省の指示に従って早期に調査を完了したい」
−−取引先からリコールの費用負担を求める声もある
同「具体的な金額提示はまだないが、当然ユーザーにかかったコストは相談次第だが、(負担する)腹づもりはしている」
◇ ◇ ◇
データ不正案件が次々と明らかになった神戸製鋼所の川崎博也会長兼社長らに対し、厳しい質問は続く。川崎氏は12日、経済産業省で記者団に対し、「鉄鋼事業ではない」と話していたが、その翌日の会見で銅線や特殊鋼で4件の不正が公表されたことに、疑問の声が相次いだ。
「隠していたわけではない。コンプライアンス(法令順守)問題という取り扱いで取締役会でも取り上げられた。損益の影響にならない、法令違反ではないということで公表はしなかった。ではなぜ公表したのか。それは、一連の不適切な行為を考えるときに現在進行中だけで分析するのではなく、過去分もどうであったか、本質的な原因を分析するには避けて通れないからだ」
川崎氏はこの公表を前向きなものだと捉えているようだが、記者側は「単なる隠蔽」と感じており、やり取りはまったくかみ合わない。
記者「昨日は、テレビカメラ十数台あった中で、この事案を知っていたのにとぼけたのか」
川崎氏「鉄鋼事業ではないと申し上げたのは、4月以降の監査、9月から自主点検の連続性の中では現認されていないということだ。ご理解いただきたい。何回言っても理解してもらえないかもしれないが」
議論がかみ合わない状況に、質問した記者からは「社長としてどうか」との指摘も出た。「神戸製鋼はこうした不正を公表しないのが普通か」との質問に勝川四志彦常務執行役員は「お客さまとの間で状況、中身を話し合う中で問題を解決した」と、供給する顧客企業の理解が得られれば問題ないとの考えを示唆した。
「出荷先企業は、これまでの発表と合わせて何社になったのか」という質問では、これまで公表していた213社から、どの位に増えたのかが注目された。これについて、勝川氏が「今のところ270社程度」と回答。しかし、次の質疑が行われているときに勝川氏は「すみません、先ほどの話ですが、500社でした」と修正。あまりの違いに会見場からはどよめきが起きた。270社は、新たに増えた数だったようだ。
トップの進退に関する質問も出た。これに対して川崎氏は、「昨日も申し上げたように現在の使命は安全性の検証の最大限の支援、徹底的な分析と対策だ。まずはそれに全力を傾注したい」と回答。さらに記者は食い下がったが、川崎氏は「それはまた、慎重に考えたい」と最後まで明言を避けた。
現時点では、業績の影響が大きくないとみていることが背景にあるようだ。
「信頼失墜や費用負担で、企業として存続できるのか」という厳しい質問にも、「売り上げに占める(不適切な案件が出た事業の)割合は4%。残りの96%は品質の生データと合致している。ユーザーの皆さんからどういう声があるかわかりませんが」と述べた。
神戸製鋼は、自動車の軽量化を進めるメーカーにアルミなどを提供し、収益化をはかってきた。そういう戦略についても「現段階で変更がない」と言い切った。調査される対象であるはずの川崎氏が、品質問題調査委員会のトップを務めていることに、疑問の声も出たが、川崎氏は反論。「調査範囲の広さ、スピード感を考えると私がトップになってリーダーシップを発揮する必要がある。外部の弁護士さんが入って公平性を担保する。ただ、さらなる透明性を問われたときは他の委員会が必要になるかもしれない」と強調した。
さまざまなグループ会社で同時並行的に不正が行われていたことについて聞かれた川崎氏は、「その分析がキー(鍵)であると考えているが、徹底した原因分析の最中で、これだという明快な回答はない」と述べており、原因に関する謎は、会見で逆に深まるばかりだった。
神戸製鋼所の不正をめぐる質疑応答は、1時間を超えて続く。
◇ ◇ ◇
−−社内で問題が発覚してからすでに1カ月半たっているが、現時点で原因や対策は考えられないのか
川崎博也会長兼社長「原因や対策をまだ考えていない、ということはない。たとえば本社部門のマネジメントに問題があったと考えている。また現物監査をどうしたのか、工程余力はどうだったのか…。1カ月以内に原因分析と対策をまとめるよう経産省から指示されたので、鋭意進めたい」
−−トップとしての反省を聞きたい
川崎氏「鉄鋼事業部門は民民契約に関する自主点検も始めさせ、それを本社で監査するという組織を4月に始めた。それなのになぜアルミ・銅事業では適用しなかったのか、それも要因の一つだと考えている。私自身の判断も原因の一つだと推測している」
−−不正の背景に納期や作り直しにかかるコストなどのプレッシャーはなかったか
川崎氏「ないとはいえない。上からは指示していないが、お客さんのニーズに対する生産工程余力、検査行程の自動化などが十分だったのか、現在そこを調べている」
−−株価でみると神鋼の企業価値は4割低下した。現経営陣に回復できるのか
川崎氏「そう信じて、足元の原因分析と対策の精度を高めたい」
−−鋼線などは「安全性に問題ない」との説明だが
勝川四志彦常務執行役員「納入先からそういうお話を頂いている。その他の製品についてはまだ、そういうお話を頂いていないという整理だ」
内山修造ものづくり推進部長「改竄前の生データを顧客に提供し、確認を進めている」
川崎氏「生データで顧客に判断していただいている」
−−海外自動車メーカーにも製品を納入している。ユーザーの不安を解消する責任をどう考える
勝川常務執行役員「顧客(納入先)と協力しながら、必要なデータを提供して確認している。当社はサプライチェーンのもっとも上流に位置しており、製品が複雑な加工を経てどんな形で最終消費者に渡っているか、すべて把握するのは難しい。顧客と相談しないと確認できない」
−−どのメーカーに納入しているのか、公表できないのか
同「取引上の守秘義務があるし、まだ調査が続いている」
−−不正の範囲は広汎だ。神戸製鋼グループ自体に不正を行う土壌があるのではないか
川崎氏「神戸製鋼グループのビジネスは、鉄鋼もアルミ・銅も『BtoB』、つまり半製品をメーカーに売るビジネスだ。一方で、機械事業の建設機械などは『BtoC』、消費者向けの完成品を売っている。まだ調査中だが、BtoCの部門では不正が起きていない。そこに原因の本質があると思う。深掘りが必要だ」
−−今回の不正に限らず、問題が繰り返されている。企業文化に問題があるのではないか
川崎氏「風土的なものを感じられるのも仕方ない。繰り返しになるが、1カ月以内に原因・対策をまとめるのでご理解を頂きたい」
◇ ◇ ◇
1時間24分の会見を終えた川崎博也会長兼社長ら3人は、再び深々と頭を下げて会場を後にした。