日本のメディアだと、
制裁を北朝鮮労働者が帰国する場面を現地取材なんて、してないですからねぇ。
まさか、
制裁が効果を発揮している情報を隠したくて、
取材に行かない……とか。そんなことはないのでしょうけど。
というわけで、
韓国メディアの朝鮮日報に掲載されていた記事にブックマークを貼りました。
内容は、
国連で決議された北朝鮮への制裁が実行されて、
北朝鮮籍の新しい労働者を雇用することが禁止されたので、
今の職場で雇用契約が切れた人は、
別の職場へ移れなくて帰国することになったようです。
この制裁案は、
8月に出されたヤツの方ですけど、
この制裁決議が成立したとき、
日本のメディアは『ほとんど効力が無い、あまり意味がない』を連発していました。
でも、
たしかに即効性には乏しいですけど。
時間をかければ、こうしてジワジワとボディーブローみたいに効いていく、
そういう地道な内容ではないでしょうか。
私としては、ずっとそう思っていましたし。
韓国メディアも、こうやって現地での変化を伝えてますし。
ただ、
何分、労働者の移動については雇用契約と関係していますから、
こういう変化が起きるのは、3ヶ月、6ヶ月、1年……
そのくらい長いスパンを見なければならず、
あと、1年か2年で北朝鮮がICBMを完成させるかもしれない。
というタイムスパンの中では、
たしかに、
『即効性が期待できないから役立たず』という見方もあるでしょうけど。
でもねぇ、
1ヶ月か2ヶ月かそこらで劇的な効果を発揮するような、
そんな内容の制裁は、
逆に過激すぎるとも言えるわけでして。
裏を返せば、『1ヶ月か2ヶ月で北朝鮮の国の在り方を変えろ』と強要しているわけですから、
ヘタをすると変化が激烈すぎて強烈な反発を招くこともあり得るわけです。
国境を接している
中国とか、ロシアが早々クビを立てには振らないわけです。
日本のメディアが出すコメントはどこか『他人事』なんですよねぇ。
まあ、それはそれとして、
なんで日本のメディアからは
この手の情報が入ってこないのでしょうか……
北朝鮮関連のニュースはそれなりに需要がありますし、
テレビでも頻繁に取り上げているネタですから。
取材する価値もあるはずなんですけど。
日本のメディアが垂れ流す情報って、
どこからの誰かが発信した情報の『又聞き』みたいなものばかりなんですよねぇ。
そりゃあ、
韓国の場合、同じ朝鮮民族で国は切れていても個人では繋がっている、
ってことがありますから。
日本の比べると、北朝鮮に関しては遙かに情報を手に入れやすいのかもしれませんけど。
それにしても、
韓国メディアの情報を追いかけていると、けっこうな情報格差を感じます。
とは言え、
韓国は韓国で、
去年のマレーシアでの暗殺事件の時には、
日本の方が事件の速報で遙かに先を行っていて。
これまた、
日本に遅れをとった韓国メディアに対する批判の声がたくさく出ていたりして……
それで巻き返しを図るために奮起した。
ってこともあるのでしょうか……
9月23日(現地時間)午前11時30分ごろ、クウェートの首都クウェート市北部。ある古びた商店の前に、砂ぼこりをかぶった中型乗用車が1台止まった。コットンパンツにTシャツという服装をした北朝鮮の男性二人が降りてきて、1階の薬局に向かった。乗用車の前の座席にサングラスを掛けて座っていた男性が、車の窓を開けて叫んだ。「さっさと行ってこいよ!」
広さおよそ10平方メートルの薬局では、ヘジャブをかぶったエジプトの女性薬剤師と南アジア系の男性従業員が北朝鮮男性の注文を受け付けていた。記者が「こんにちは」と韓国語であいさつすると、二人の北朝鮮男性のうち一人が薬を急いで袋に入れつつ「あんた、韓国(の人)かい?」と言った。「平壌に戻る支度をしているのか」と尋ねると「そうだ」と答えた。続いて「制裁のせいで早期帰国することになったのか」と尋ねると「こっそり録音しているのならやめろ」と急に怒り出した。薬局の外で警笛が鳴り、二人はぎくりとして、薬代を払うと飛び出していった。
この薬局は、クウェートで暮らす北朝鮮人の行きつけの店だという。看板には、「グラナダ」という薬局名が英語・アラビア語と共にハングルでも書いてあった。薬剤師に「さっきの北朝鮮の人は何を買ったのか」と尋ねると、カウンター上の紙をさっと示した。北朝鮮の人間がひんぱんに買い求める薬品およそ70種類の名前が、英語とハングルで併記されていた。「Anti worm/虫下し」「Nootropil/脳疾患後遺症薬」「Baby Vitamin/子ども用ビタミン」など一般の薬品がほとんどだが、成人用の薬品の名前も見えた。薬剤師は「本人が体を悪くして薬を買うこともあるが、主に帰国直前、プレゼント用にそろえていく。このごろ、薬局を訪れる北朝鮮の人はぐんと増えた」と語った。
南アジア系の従業員は「北朝鮮の建設労働者は主に虫下しや子ども用ビタミンを買っていくが、正装して胸の片側に赤い(金日成〈キム・イルソン〉・金正日〈キム・ジョンイル〉)バッジを付けた人は、バイアグラなど高価な品物もよく買っていく」と語った。
クウェート国内の北朝鮮労働者が大挙撤収するのに伴い、北朝鮮は賃金だけでなく密造酒売買による収益も断たれることになった。クウェートの北朝鮮労働者は過去10年にわたり、別名「サデギ」と呼ばれる密造酒を組織的に造り、毎年数百万ドル(100万ドル=現在のレートで約1億1200万円、以下同じ)を売り上げてきたと推定されている。サデギは1リットルおよそ30ドル(約3400円)で取引された。イスラム教が国教のクウェートはアルコールの販売を厳しく禁じているため、およそ290万人に達する海外労働者などは「闇市場」で密造酒を購入してきた。北朝鮮労働者は最近、クウェート国内の「サデギ」生産設備をインド側に引き渡したという。北朝鮮製「サデギ」を密売しているあるインド人は「北朝鮮労働者は早期帰国措置のせいで非常に怒っている。賄賂を払ってなんとか出てきたのに、金も稼げずに戻ることになったと訴える人が多い」と語った。クウェートの大手建設会社「アルハサウィ」の関係者は「最近、あるエジプト人労働者が『金正恩(キム・ジョンウン)はなぜ核兵器を開発するのか』と冗談交じりで言ったところ、北朝鮮労働者およそ30人に取り囲まれ、乱闘になるという事件もあった。北朝鮮の人間は皆かなりデリケートになっているようだった」「以前は、同じ建設労働者なら北朝鮮労働者の宿舎の近所に行くこともできたが、最近では近寄ることもできないように警戒を厳しくしている」と語った。
現在、クウェートやアラブ首長国連邦(UAE)など湾岸地域に残る北朝鮮労働者3000人は、ほとんどが「ナムガン建設」の所属だといわれている。ナムガン建設の従業員は全て北朝鮮軍の出身で、ほかの北朝鮮労働者の脱走や暴動などを防ぐために派遣された、と現地の消息筋は伝えた。しかしナムガン建設も米国などの制裁対象で、同社の従業員も荷物をまとめている。
9月21日、カタールの首都ドーハ南部にある移住労働者の居住地、そこのショッピングモール「Safari」で見掛けた20代の北朝鮮労働者7−8人は、旅行用のバッグや靴などを選んでいた。一行から少し離れて一人でいた北朝鮮労働者に「帰国するのか」と尋ねると「そうだ」と答えた。彼は、自分で選んだ茶色のバッグを手にしていて「黒よりこの方がいいんじゃないか」と言うと、好意的な反応も見せた。しかし、少しして同僚が近づいてくると一変した。「秋夕(チュソク=中秋節。今年は10月4日)を故郷で過ごせてよかったじゃないか」と言ったが、彼は何も答えず、険しい顔をして同僚と一緒に記者を取り囲み、体を小突いてすぐにその場を立ち去った。現地の消息筋は「中東の北朝鮮労働者は、今年の年末ごろにはほとんどが中東を離れ、現地の建設会社から賃金を受け取らなければならない一部の幹部クラスだけが残るらしい。今後、北朝鮮の海外労働者は中国やロシアに集まる可能性がある」と語った。しかし中国やロシアも、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議から自由ではいられず、海外労働者派遣を通した北朝鮮の外貨稼ぎが打撃を被ることは避けられないという見方が多い。