今回は
記録メモ代わりのブックマークです。
ロシアのウクライナ侵略戦争に関して。
中国の
外交専門家の分析、評価を
日本語訳した内容です。
情勢分析の適否ついて
今後の評価待ち。
だけど、
話題にならずに
このまま埋もれるかもしれないので。
ブックマーク付けて
記録を残しておこう、と思いました。
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今回ブックマークを付けた記事の中で
取り上げられている
中国外交官の分析について、
私の印象を述べると。
西側欧米マスメディアが発信している
情勢分析と
重複する部分が多く見られて。
そのような点が
中国・習近平政権にとって
目障りだったのではないか、と。
中国の専門家が
欧米の情勢分析を肯定した、
となると。
欧米のメディアが発信している情報が
正しかった。
と、
そのように
解釈されてしまいますからね。
それは、
中国・習近平政権が
絶対に認めない。許さないですよね。
衝撃の「ロシア敗北論」全文和訳…元駐ウクライナ中国大使は何を語ったのか
習近平政権が抹消した「幻の講演」
ロシアがウクライナに侵攻して、まもなく3ヵ月を迎えるが、中国にもウクライナ兵士並みの勇気を持ち合わせた外交官がいるものだ。
高玉生(こう・ぎょくせい)元駐ウクライナ中国大使、74歳である。
まずは簡単に略歴を紹介する。高氏は、国共内戦中の1947年に、首都・北京を取り巻く河北省で生まれた。青年時代の文化大革命の混乱を経て、1975年から1979年まで、天津市で中学教師をやっていた。
1979年、31歳にして、北京大学経済学部の大学院に入る。1982年に中国国際問題研究所に入所。1984年にロシアンスクールの外交官となり、4年間、3等秘書官及び2等秘書官としてモスクワの中国大使館勤務。1992年から再び4年間、1等書記官及び参事官として、モスクワの中国大使館に勤務した。その後、2000年から3年間、駐トルクメニスタンの中国大使を務めた。
続いて、2005年11月から2007年1月まで、第6代の駐ウクライナの中国大使に就任した。退官後は、中ロと中央アジアを結ぶSCO(上海協力機構)の副書記長を務めた。その後も、ロシア及びウクライナの専門家として、たびたび中国のシンポジウムやメディアなどに登場している。中国の外交官にしては珍しく、舌鋒鋭く本質を突く発言をすることで知られる。
そんな中国で誰よりもウクライナを知る男が、中国社会科学院と中国国際金融30人論壇が共催して開いた非公開のオンライン・シンポジウムで、昨今のロシアによるウクライナ侵攻について、持論を開陳した。
中国社会科学院は、1977年に鄧小平氏の肝煎りで、中国国務院(中央政府)傘下のシンクタンクとして開設された。現在では、31の研究所、45の研究センターなどを擁し、総勢4200人を超える、いわば「中国政府の頭脳」である。
また、中国国際金融30人論壇は、2020年8月、人民元国際化などを共同研究するため、清華大学、北京外国語大学、上海発展研究基金会が共同発起人となって設立した。中国人民銀行(中央銀行)や中国銀行などからも精鋭部隊が送り込まれ、活発な活動を展開している。
こうした「中国の中枢機関」で、高玉生元駐ウクライナ大使が、講演を行ったのだ。その内容の一部を、5月10日に『鳳凰網』(香港の鳳凰衛視が中国国内で流しているニュースサイト)が報じたところ、大騒ぎになった。それは、「プーチン政権ベッタリ」の習近平政権に泥を塗るような内容だったからだ。
この記事は、当局によって「秒册リ」(ミアオシャン=1秒で削除される)に遭い、たちまち消えてしまった。いまは、高玉生元大使の発言も、シンポジウム自体もなかったことにされている。「発言録」に滲む元外交官の矜持
そんな中、高玉生元大使が自らの発言を査読した「発言録全文」を入手した。全体は4部構成になっていて、第1部がウクライナ侵攻の戦況分析、第2部が近未来の戦況予測、第3部が戦争終結後のロシア、第4部が戦争終結後の新たな国際秩序について、虚心坦懐に述べている。
以下、「発言録全文」を訳す。少々長いが、中国のロシアとウクライナを専門とする元外交官の矜持を感じ取ってもらえればと思う。
〈 1.今回の戦争では、ロシアの態勢が日増しに受け身になり、不利になってきている。すでにロシアの敗勢が顕著だ。ロシアが失敗に向かった主要な原因は、以下の通りである。
第一に、(1991年12月の)ソ連解体後、ロシアは終始、衰退していく過程が続いていた。その衰退は、まず解体前のソ連の衰退の持続であり、ロシアの統治グループの内外政策上の失策とも関係している。西側の制裁もまた、衰退の進展を加速化させた。
プーチンの指導下で行われたいわゆるロシアの復興、もしくは振興は、もともと存在していない架空の出来事だったのだ。ロシアの衰退の芽は、経済・軍事・科学技術・政治・社会など各分野において、またロシア軍及びその戦力にも、深刻なマイナスの影響を与えたのである。
第二に、ロシアの電撃作戦の失敗、速度戦によって(戦争を)即決できなかったことは、ロシアが失敗に向かって進み始めたことの予兆となった。いわゆる軍事超大国の地位とは不釣り合いな経済力と財政力は、実際、日々数億ドルずつ消耗していく先端科学技術戦争を支えきれなかった。ロシア軍が窮して敗れていく状況は、いまや戦場の随所で見られる。戦争を一日引き延ばすごとに、ロシアには負担が重くのしかかっていくのだ。
第三に、軍事的、経済的実力などの面でのウクライナに対する(ロシアの)優位性は、すでにウクライナの決然とした頑強な抵抗反撃と、西側国家のウクライナへの巨大で持続的かつ有効的な援助によって、抹消されてしまった。そしてロシアと、アメリカなどNATO(北大西洋条約機構)国家との武器技術装備、軍事理念、作戦モデルなどの分野での実力差が、双方の優劣の勢いの違いをさらに突出させている。
第四に、現代戦争はすべて、必然的に総合戦である。軍事・経済・政治・外交・世論・宣伝・諜報・情報など各分野を包括したものだ。ロシアは戦場で苦境に立たされているだけでなく、これらその他の分野でもすべて打ち負けている。このことが、ロシアの最終的な敗北を決定づけている。もはや時間の問題である。
第五に、今回の戦争をいつどんな形で終結させるかという決定権は、すでにロシアの手中から離れてしまっている。主要な既得の成果を得た条件下で、一刻も早く戦争を終結させようというロシアの意図、希望は、もはや無に帰したのだ。そうした意味で、ロシアはすでに戦略的なリードと主導権を失ってしまったと言える。2.今回の戦争では次の段階で、(ウクライナの)対抗するパワーと強度がおそらく一歩上がる。
(戦争が)この先、拡大し、エスカレートしていく可能性を排除しない。その原因は、双方の目標が大きく相反し、向き合うべき方向と走っている方向が逆のためだ。
ロシア側のボトムラインは、クリミア半島の帰属を確保しつつ、ウクライナ東部を占領することだ。一方のウクライナ側は、主権と領土保全の問題で、ロシアに譲歩するつもりはない。そのため、ロシアとの戦争によってウクライナ東部とクリミア半島を取り返そうと決めている。
アメリカ、NATO及びEU(欧州連合)は、プーチンを敗北させるという決意を明白にしている。サリバン米大統領安保担当補佐官は最近、ロシアとウクライナの戦争でアメリカが達成すべき目標を3つ掲げた。第一に、ウクライナを独立した自由な国家にとどめること。第二に、ロシアの力を削ぎ、孤立させること。第三に、西側諸国が団結し、確固たる関係を築くことだ。
これらの目標を実現するため、アメリカとNATO、EU加盟国は、ウクライナへの支援を公然と増やすだけでなく、アメリカは(5月9日に)第2次世界大戦後、初めてウクライナ支援のための「武器貸与法案」を通過させた。アメリカはすでに、41ヵ国国防相会議で、ウクライナに対する援助を国際化、制度化させた。
さらに重要なことは、アメリカ、イギリスなどの国が直接、戦争に参画する程度が深まり、範囲も拡大しつつあることだ。これらすべてが、今回の戦争でロシアを敗戦に追い込み、懲罰を与えて終わらせるということを示している。3.ロシア・ウクライナ戦争と新たな国際秩序
ロシア・ウクライナ戦争は、(1945年2月の)ヤルタ会談のシステムと(東西)冷戦の残滓を、完全に終結させた。そして世界は、新たな国際関係のパラダイムと秩序に向かって進み始めた。
(1991年に)ソ連が解体した後、ソ連が保持していた国連安保理常任理事国のポストと、軍事超大国としての地位は、ロシアが引き継いだ。ロシアは、国内政治・経済・社会・文化及びイデオロギーなどの方面で、非常に多くのソ連時代の遺産と影響力を継承した。そのためロシアの外交政策は、旧ソ連とロシア帝国時代の混合体となった。
プーチン政権の外交政策の核心であり主要な方向性は、まさに旧ソ連圏を(ロシアの)独占的な勢力範囲と認識し、ロシアが主導する形で各地域を一体化させ、ロシア帝国の機構制度を復活させることにある。そのため、ロシアは発言と心意が異なっており、食言を尽くしている。
(ロシアは)旧ソ連圏の国の独立、主権、及び領土の保全をいまだに真に承認したことがなく、頻繁にそれらの国々の領土と主権を侵犯している。そのことは、ユーラシア大陸の平和と安全、安定に対する最大の脅威となっている。
ロシア・ウクライナ戦争は、こうした状況を極めて大きく変化させることとなった。ウクライナは(1991年8月に)独立後、特に2000年から、西側派(親欧米派)と東側派(親ロ派)の勢力がほぼ均衡し、選挙を通じて交代で執政するようになった。
だが、2014年にロシアがクリミア半島を併合し、ウクライナ東部地方を占領した後、ウクライナ国内では反ロ感情が高まり、親ロ派勢力は委縮し始めた。大部分のウクライナ人は、西部地域だけでなく東部地域においても、EUとNATOへの加入を支持するようになった。
今回の戦争が勃発した後、ウクライナを巡る状況は、根本的な変化が起こった。ウクライナ国内の党派や地域、階層によらず、国民が一致団結して救国抗ロを目指すようになったのだ。
ロシア(の信頼)は、ウクライナで完全に失墜してしまったと言ってよい。同時に、ベラルーシを除く旧ソ連圏の国々は、CSTO(集団安全保障条約機構=旧ソ連圏の6ヵ国加盟)とEAEU(ユーラシア経済連合=旧ソ連圏の5カ国加盟)の加盟国を含めて、すべての国がロシア側につくことを拒絶している。
ロシアは敗戦後、過去の栄光の山河を取り戻すことや、帝国として復活する機会を、徹底的に喪失するだろう。(ウクライナ侵攻によって)ロシアは、かつてのロシア帝国や旧ソ連時代の国際的地位と影響力を再び得ようとした。既存の国際秩序を打破し、ユーラシア大陸と世界の地政学的な政治版図を塗り換えようとした。旧ソ連圏の国々を再び糾合し、連盟や帝国復活の追求に執着したのだ。
だがそれによって、アメリカ及び西側諸国との根本的な対立と衝突を起こしてしまった。それがロシアと、アメリカ及び西側諸国との関係の主要な矛盾点となり、障害物となってしまった。
こうした問題における双方の角逐と闘争の大部分は、米ソ冷戦時代の継続であり余韻である。同時にイデオロギー的な色彩も帯びていると言える。
今回の戦争を通じて、ロシアとアメリカ及び西側諸国との対峙と争奪戦は、ロシア側の完敗となって終わりを告げることになるだろう。換言すれば、ポスト冷戦時代、もしくは冷戦時代の延長が、最終的に終了することになるのだ。4.ロシア・ウクライナ戦争後の国際秩序の変化として起こりうるいくつかの要点
1)ロシアは政治・経済・外交などの面で、目に見えて弱体化と孤立、懲罰を余儀なくされる。ロシアの国力はさらに衰退していくだろう。おそらく一部の重要な国際組織から放逐され、国際的な地位は明確に低下するに違いない。
2)ウクライナは、ロシアの軌道と勢力範囲(ロシアにもしも勢力範囲というものがあればの話だが)から離脱し、ヨーロッパの大家族のメンバーとなる。すなわち西側諸国の一員となるだろう。
3)その他の旧ソ連圏の国々は、おそらく程度の違いこそあれ、ロシアから遠ざかっていく。そのような新たな趨勢が出現するだろう。一部の国は、より積極的に西側諸国に寄りかかろうとするに違いない。
4)日本とドイツは、完全に第二次世界大戦の敗戦国としての約束に別れを告げる。軍備拡張を加速化させ、より積極的に政治大国としての地位を掴もうとする。ただし、(日独が)西側陣営から離脱することはない。また、完全に平和的発展の方針に背くわけでもない。
5)アメリカとその他の西側諸国は、国連とその他の重要な国際組織の実質的な改革を、本気になって進めるだろう。たとえ改革が暗礁に乗り上げようとも、別な手段を模索していく。アメリカと西側諸国は、いわゆる自由民主のイデオロギーで線引きをし、ロシアなど一部の国を排斥するだろう 〉ウクライナ戦争がもたらす「地殻変動」
以上である。高玉生元駐ウクライナ大使は、極めてまっとうな発言をしていることが、お分かりいただけただろう。外交官として長年、旧ソ連及びロシアと対峙してきた経験に基づいているわけで、もしかしたら中国外交部の現役外交官たちのホンネを代弁しているのかもしれない。
だが、重ねて言うが、「プーチン政権ベッタリ」で、この9年余り押し通してきた習近平政権としては、看過できない発言だったのだろう。今年後半には、習近平総書記の3選を賭けた第20回中国共産党大会を控えており、どんな「不穏の芽」も摘み取っておきたいだろうからだ。
特に、「ゼロコロナ政策批判」と「プーチン政権批判」は現在、それぞれ内政と外交のタブーとなっている。毎日当局が、「不穏な発言」に目を光らせているのだ。
その点、高玉生元駐ウクライナ大使は、「ロシアのことはいくらでも話すが、中国の対ロシア外交については言及しない」という態度を貫いている。そのため、発言の最後で、「アメリカと西側諸国は、いわゆる自由民主のイデオロギーで線引きをし、ロシアなど一部の国を排斥するだろう」と述べているが、「一部の国」の国名は挙げていない。
中国が含まれることは一目瞭然なのだが、そこは「寸止め」したのだろう。だが、「プーチン政権批判」も御法度なので、結局、発言は消されてしまった。
おしまいのくだりで、日本について言及しているのも興味深い。日本では、「ロシアによるウクライナ侵攻は遠いヨーロッパの惨事」と見る向きが多い。だが、中国の老獪な外交官は、「ロシアが日本という『パンドラの箱』を開けてしまった」と見切っているのだ。 確かに、ジョー・バイデン米大統領が来週22日に来日し、24日には日本でQUAD(日米豪印)の首脳会合が開かれる予定だ。中国は、QUADやAUKUS(米英豪)は、近い将来、アメリカが「アジア版NATO」を構築し、中国包囲網を築くための一過程と捉えている。そうした動きが、今回のロシアのウクライナ侵攻によって加速化していくと見ているのだ。
実際、日本では今月11日、中国を実質上のターゲットとした経済安全保障推進法が成立した。また「防衛費GDP2%論」から「反撃能力(敵基地攻撃能力)容認論」まで俎上に上っており、岸田文雄政権が進める「防衛3文書」の改定では、こうした要素が組み入れられていくものと思われる。
ロシアによるウクライナ侵攻が東アジアにもたらす「地殻変動」は、巨大なマグニチュードになるように思えてならない。